概要
「なぜ勉強するの?」という問いは、多くの子どもが一度は抱き、親や教師を困らせる質問の一つです。この問いに対する答えは、子どもの将来を考えるうえで重要な機会でもあります。本記事では、子どもたちが納得できる形で勉強の意義を伝える方法や、勉強が持つ多面的な意味について解説します。
執筆者情報
大学講師
中村 優志
目次
①背景
②戦略的アプローチ
③戦略実行時の課題
背景
時代の変化に伴い、勉強の意義も多様化しています。従来の「いい大学に入るため」「安定した仕事に就くため」といった答えだけでは、現代の子どもたちには十分響かないことも増えています。
一方で、子どもたちは自身の興味や目的意識を持たずに勉強を続けることに疑問を抱きやすく、適切な答えがないとモチベーションを失うことがあります。
戦略的アプローチ
1. 子どもの目線に立った答え方
子どもにとって最も大事なのは、親や教師が自分の疑問に真剣に向き合ってくれていると感じることです。問いを軽視せず、「その質問は大事だね」と共感を示した上で会話を始めましょう。
例えば、「勉強すると、どんなことが楽しいと思う?」と逆に質問をして、子どもの考えを引き出すのも良い方法です。
2. 勉強の実用性を具体的に説明する
勉強が日常生活にどう役立つかを具体的に示します。算数が買い物の計算に役立つこと、国語が人とのコミュニケーション能力を高めることなど、身近な例を挙げると実感しやすくなります。
例えば、「将来、好きなものを作る仕事をするときに、数学や科学の知識が役立つよ」と、子どもの興味に結びつけて話すと響きやすいです。
戦略的アプローチ
3. 勉強は「思考力」を鍛えるトレーニングであることを伝える
勉強を通じて得られるのは知識だけではなく、問題解決能力や論理的思考力です。これらのスキルは、どんな分野でも必要とされる普遍的なものです。
例えば、「考える力を鍛えると、何か困ったときにどうしたらいいかを自分で決められるようになるよ」と伝えられます。
4. 将来の選択肢を広げるための手段と説明する
勉強は、将来自分の可能性を広げるための準備ともいえます。勉強をしておくことで、やりたいことが見つかったときにそれを叶えるための基盤になります。
「今は何をしたいか分からなくても、勉強しておくと選べる道が増えるんだよ」と説明すれば、未来への希望を感じてもらえるでしょう。
戦略的アプローチ
5. 楽しさや挑戦の一部として捉えさせる
勉強を義務や負担ではなく、ゲームや冒険のような挑戦として捉えられるように伝えます。例えば、「クイズみたいに自分の知らないことを発見するのが勉強だよ」とポジティブに表現することで、勉強への抵抗感を減らせます。
戦略実行時の課題
1. 子どもにとって抽象的な答えが伝わりにくい
「未来のため」「可能性を広げる」という答えは、特に小さな子どもには理解しづらい場合があります。その場合は、具体的な例や身近な体験に結びつけることが重要です。
2. 勉強が「強制」と感じられる場合
親や教師が「やらなければならない」と押しつけると、勉強の意義を考えるどころか反発心を抱かせることがあります。子どものペースを尊重し、興味を引き出す形で取り組む必要があります。
3. モチベーションが持続しにくい
答えを聞いた瞬間は納得しても、長期的に勉強を続ける動機づけにはならない場合があります。そのため、継続的に興味を引き出す工夫が必要です。