概要
SNSマーケティングの成功には、ユーザーの行動や反応を理解し、それに応じて戦略を調整することが不可欠です。本記事では、工学の「静的特性」と「動的特性」という視点を用いて、SNSマーケティングの効果を最大化する方法を解説します。ターゲット層の安定した特性(静的特性)と、リアルタイムでの反応やトレンドの変化(動的特性)の両方を活用することで、効率的で柔軟なマーケティング戦略を構築するヒントを提供します。
執筆者情報
大学講師
中村 優志
目次
①背景
②戦略的アプローチ
③戦略実行時の課題
背景
工学では、システムの性能や応答を評価する際に「静的特性」と「動的特性」が重要な指標となります。
静的特性は、システムが時間に依存せず一定の条件下で示す性能を指します。例えば、バネの「ばね定数」や回路の「抵抗値」など、外部条件が変わらない場合に安定して得られる特性です。
動的特性は、システムが時間の変化や外部からの入力に応じてどのように応答するかを示します。例えば、車のサスペンションが路面の衝撃に対してどれだけ速やかに振動を吸収するかなど、動的な状況での性能を表します。
この考え方をマーケティングに応用すると、静的特性は「安定した顧客属性」、動的特性は「リアルタイムの顧客行動」に対応します。
戦略的アプローチ
①静的特性を活用したターゲティング
静的特性は、顧客の基本的なプロフィールデータや長期間にわたって変わりにくい行動パターンに該当します。これを活用することで、SNSマーケティングの基盤を構築します。
具体例として、ブランドAがエコバッグを宣伝するとします。この場合、環境に関心のあるユーザー(プロフィールで「環境保護団体をフォロー」している人など)を静的特性として抽出します。その結果、20~40代の都市在住者が主要なターゲット層であることが判明し、このデータに基づいて広告を作成します。
使用するキーワードも「エコ」「サステナブル」に限定し、ターゲット層にマッチする静的なメッセージを構築します。
戦略的アプローチ
②動的特性を活用したリアルタイム最適化
一方、動的特性はSNS上でのリアルタイムの反応や行動を示します。マーケティングにおいてこれを活用することで、短期間でトレンドに乗った戦略を実行可能です。
仮に、ブランドAがエコバッグのキャンペーンを開始し、SNSで投稿したとします。初日の反応として「デザインが素敵」「軽くて便利」というコメントが多い一方、「価格が高い」といった否定的な意見も一部あったとします。
この動的なフィードバックを基に、キャンペーン第2弾では「10%割引」のプロモーションを追加。また、「軽量でおしゃれなデザイン」という強みを強調した投稿を再配信し、エンゲージメント率の向上につなげることができます。
戦略的アプローチ
③静的・動的特性を統合したキャンペーン設計
両方の特性を組み合わせることで、長期的な戦略と短期的な対応を両立させます。静的特性を使って、長期的にターゲット層(エコ志向の都市住民)を明確化した上で、動的特性を用いてリアルタイムでの市場の反応(割引への好反応)やトレンド(特定のハッシュタグの流行)に即時対応することで、顧客層の期待に応じたメッセージを的確に伝えることが可能になります。
戦略実行時の課題
①データの精度と収集の課題
静的特性を得るためには顧客データを蓄積する必要があり、プライバシー保護とのバランスを取ることが重要です。また、動的データのリアルタイム収集には高度なツールが求められます。
②リアルタイム対応のリソース不足
動的特性を活用するには、迅速な意思決定や対応が必要で、専用のチームや運用プロセスが求められます。これがリソース不足につながる可能性があります。
③トレンドの寿命の短さ
SNS上のトレンドはすぐに移り変わるため、動的特性を基にした戦略が効果を発揮するタイミングを逃さないことが重要です。